フライ・ウィズ・ザ・ウインド  McCoy Tyner  



  1970年代に入るとジャズ界は、エレクトリック楽器を用いたフュージョンが全盛。だがマッコイ・タイナーはそういう流れにとらわれず、独特のアコースティック・サウンドを用いて、スケールが大きく、パワフルに独自の音楽を展開していく。これらは70年代マイルストーン・レーベルの作品から見られる。

本作は、ドラムのビリー・コブハム、フルートのヒューバート・ロウズ、ベースのロン・カーターに加えて、バイオリン、ビオラ、チェロ10人のストリングスと、オーボエ、ハープなどが壮大なスケールで鳴り響く感動的な傑作アルバム。とりわけ、パワフルなコブハムがストリングスと見事にマッチし、大活躍。マイルストーン・レーベルの中では非常に聴きやすい作品です。なお、4曲目以外はマッコイのオリジナル。

1曲目のタイトル曲〈フライ・ウィズ・ザ・ウインド〉は、最初にチェロの演奏から入り、続いてフルート、ストリングスなどが鳴り響いていくイントロ。テーマに入ると、一変して熱く激しい演奏になります。マッコイとストリングスが雄大なテーマを奏でていき、途中マッコイとコブハムの重量級同士のぶつかり合いが、なんと素晴らしいこと。ソロでは、バックでストリングスがテーマを演奏をする中、マッコイのピアノはアグレッシブなプレイ、それにしてもコブハムは迫力ある演奏を繰り広げている。続くロウズのフルートは、バックのリズムに乗って、音は歯切れ良く、軽快なプレイを展開している。そして、テーマへ戻っていく。



2曲目の〈サルヴァドーレ・デ・サンバ〉は、速いテンポで繰り広げるジャズ・サンバ。ピアノの演奏から始まり、ストリングスが入り、フルートがメロディーを吹く。ロウズの激しさの中にも繊細さを失わないソロ、マッコイは小気味のいいソロを聴かせている。続くはコブハムとカーターのデュオ、カーターのベースは野太い音で力強く、コブハムは重量感溢れるドラム。ストリングスをバックに、フルートが奏でるテーマへ戻る。
youtube.com/?v=0vBiWKIyseY

3曲目〈ビヨンド・ザ・サン〉は、スロー・テンポで、美しいクラシック風の曲。ハープの演奏からオーボエがテーマを吹き、間をおいて、今度はフルートがテーマを吹く。ソロはマッコイのピアノが美しいタッチで
聴かせている。



4曲目の〈ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム〉は、ミディアム・テンポのスタンダード。カーターのベースが一定のリズムを刻む中、ラテン調のリズムでマッコイのソロ、ロウズのフルートは分厚い音色で素晴らしいソロを展開している。
youtube.com/watch?v=-y2xNVGAauE

5曲目〈ローレム〉は、活気あふれるテーマで始まり、ソロは終始ピアノ・トリオで、マッコイは容赦なくがんがん攻めまくり、とにかく熱い演奏。続くカーターは切れ味鋭いウォーキング・ベース。コブハムはがっちりとサポートしています。
youtube.com/watch?v=9Cv2ZKEfo4U

フライ・ウィズ・ザ・ウインドの商品詳細ページ


   

 Recorded. January 19 - 21, 1976.
 Milestone.

 McCoy Tyner piano
 Hubert Laws alto flute and flute
 Ron Carter bass
 Billy Cobham drums
 Paul Renzi piccolo and flute
 Raymond Dusté oboe
 Linda Wood harp  Plus strings

 1. Fly with the Wind  8:27
 2. Salvadore de Samba  12:12
 3. Beyond the Sun  5:31
 4. You Stepped Out of a Dream 6:42
 5. Rolem  5:42
 6. Beyond the Sun (Alt Take)  5:08
 7. Rolem (Alt Take)  5:15